りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2019/3 熱帯(森見登美彦)

今月の読書を振り返るより、Yahooブログが閉鎖されるというニュースにショックを受けています。15年かけて4000冊近く書き溜めたレビューを移転しても、苦労して維持している索引機能は失われてしまうし、何よりブログ人口が減っている中で移転先だっていつ閉鎖されるかもしれないのですから。いっそのこと、Amazonのブックレビューにでも片っ端から貼り付けてしまおうかと思ったりもしています。これまた気が遠くなるほど膨大な作業なのですが。

 

1.熱帯(森見登美彦)
最後まで読み終えた読者がいないという奇妙な本『熱帯』をめぐる物語は、創造という行為の源泉を探る作品でもありました。語り手が次々と変わり、何重もの入れ子構造となっている本書は、『千夜一夜物語』の異本でもあるようです。やがて『熱帯』の作中に入り込んだ語り手は、老シンドバッドや満月の魔女と出会い、群島や京都や満州や謎の図書室を行き来し、ついには魔王と対峙するに至るのですが・・。

 

2.キャッツ・アイ(マーガレット・アトウッド))
語り手は著者自身の面影を宿した50歳の女流画家・イレインが振り返る半生は、「後になって安全な距離ができたときにはじめて眺めることができる」ものでした。タイトルの「キャッツ・アイ」とは、子供時代の宝物でいつもポケットにしのばせていた、猫目模様のビー玉のこと。少女時代の陰惨なイジメの呪縛から彼女自身を解放するに至る、芯の強さを象徴している存在です。

 

3.両方になる(アリ・スミス)
15世紀イタリアの画家の霊が語る「目の章」と、母を亡くした哀しみに沈む少女が語る「カメラの章」のどちらから構わないという、不思議な構成の作品です。どちらを先に読むかで、もう一方の章の位置づけが変わってくるようですが、そこは本質的な違いではありません。タイトルの意味は、過去と現在、男性と女性、現実と虚構という、対立関係にある2つのものに身を重ねることを指しているのでしょう、

 

 

2019/3/30