りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

万次郎茶屋(中島たい子)

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漢方小説の著者にSFは似合わない気もしますが、もちろん「ど直球SF」ではなく「すこし不思議」な程度。これが意外と合うのです。やはりSF仕立てであったLOVE&SYSTEMSはちょっと外した感もありましたが、本書には著者の魅力が溢れています。

「親友」
遠い宇宙からのメッセージをきっかけに西暦を廃止することにした地球。新たな「地球暦」採用の前夜を共に過ごす「親友」を捜しに街に出た主人公でしたが、彼が出会ったのは意外な人物でした。友情が世界を救うことになりそうです。

「初夜」
結婚して初めて夫が宇宙に旅立ち、一人での夜を迎えることになった主人公の女性は、寂しさよりも開放感を感じてしまいます。そんな彼女のもとに「宇宙パイロットの妻の会」の会長と名乗る女性が現れるのですが・・。「不在」ということを突き詰めて考えてはいけないようです。

「質問解答症候群」
5歳の時に「赤ちゃんの作り方」を両親に質問したところ、あまりにリアルな答えが返ってきてトラウマになってしまった男性は、女性とうまく付き合えない大人になってしまいました。カウンセラーは、彼の悩みを解決することができるのでしょうか。彼は5歳の自分に答える「正解」を考えなくてはならないようです。

「80パーマン
何をやっても「惜しい」人生をおくってきた男が「80パーセントマン」として、活動することになりました。緩い解決を求めている人が多いことに驚かされた男ですが、そこに「120パーセントマン」というライバルが登場。どちらも大変ですが、自分を見失わずに適性を生かすことが大切なようです。

「万次郎茶屋」
動物園で注目もされず、静かな日々を送るイノシシの万次郎。彼の唯一のファンで画家志望の女性は、万次郎を主人公にした絵本を書いて、それが売れたら万次郎を店長にしたカフェを開きたいというのですが・・。ちょっと切ない結末ですが、ハッピーエンドなのでしょう。

「私を変えた男」
元夫の再婚話を聞いた女性が飲み会で出会った男性は、彼女のことを以前から知っていたようです。実はこの女性は第一話でちょっぴり登場していて、全部の物語がここで緩く結びついてくるのです。恋愛に関しては、地球人も宇宙人も同じなようです。

2017/10