りぼんの読書ノート

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水滸伝3(北方謙三)

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愛人としていた閻婆借殺害の罪に問われて放浪の旅に出た宋江は、江州へと向かいます。旅の途中で得た仲間が黒旋風の李逵水滸伝でも一二を争う愛されキャラの人物でしょう。さらに掲陽鎮の顔役である穆弘、彼のライバルで江州の闇塩商人である李俊、飛脚屋の張横と漁師の張順ら、後に梁山泊で重きをなす人物らと知り合うことになります。 

 

しかし宋江らの一行は、青蓮寺の幹部である黄文炳に居所を掴まれて大軍に攻囲されてしまいます。穆弘と李俊の手勢が宋軍と死闘を繰り広げますが、遠い梁山泊からの救援は間に合うのでしょうか。原典でも前半のハイライトである江州の戦いですが、さすが北方さんの描く戦闘場面は大迫力。 

 

その一方で、宋国を裏から動かしている諜報組織・青蓮寺は、梁山泊の財源である闇塩の道を断とうと画策しています。公孫勝の率いる至死軍との暗闘が激しくなっていくのですが、非情に徹しきれない石秀は至死軍から外されて楊志が籠る二竜山への転属を命じられてしまいます。しかしこれは適材適所というもの。原典では出番の少ない人物まで、ひとりひとりをきちんと描かれるのも「北方水滸伝」の魅力ですが、その代表格は鮑旭でしょう。野獣でしかなかった盗賊は、王進の下で人間として生まれ変わることになります。 

 

本巻ではじめて梁山泊全図が紹介されました。防御システムや統治機構の存在などまで、しっかりと描き込まれています。こういうデテイルまで想定することが、リアリティを増すのです。 

 

2019/10再読