りぼんの読書ノート

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べにはこべ(バロネス・オルツィ)

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1792年のフランス。王政を廃止した第一共和政が、貴族たちを日夜ギロチン台に送り続ける狂乱の中で、イギリス人の謎の秘密結社が暗躍していました。その結社「べにはこべ」の目的は、血に飢えたフランスから貴族たちを脱出させることであり、その首領は秘密の存在なのです。
 

 

本書は「べにはこべ」の痛快な活躍を縦線とし、イギリス貴族とフランス美女の夫婦の愛情を伏線とする物語といえるでしょう。フランスのスパイ・ショーブランが用いる卑劣な罠によって正体を見破られた「べにはこべ」の首領は、どのようにして危地を脱するのでしょう。イギリス人貴族である夫への愛を再確認したフランス人美女マーガリートの献身的な冒険は、読者をわくわくさせてくれます。 

 

赤毛のアン』の翻訳で有名な村岡花子さんは、本書の後書きに「危険と、謀略と、突然なる死の驚きと美女の苦悩とさまざまのスリルが相次いで起こる。しかしこれらすべての上に輝くものは清らかな愛情に満ちた叡智であり、それがこの作品の魅力である」と書き記しています。これ以上の解説は不要ですね。もうひとつの彼女のメッセージを記してこのレビューを終えましょう。「愛する少女たち、雄々しくたのしく進んでください」。 

 

2019/10