りぼんの読書ノート

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妙なる技の乙女たち(小川一水)

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時は2050年の近未来。既に月と地球を結ぶ軌道エレベーターが、東南アジアの海上都市リンガに建設されていて、宇宙産業の拠点となっています。そこでは男たちに交じって、数多くの女性たちもひたむきに働いていました。
 

 

宇宙服のデザインに挑む駆け出しデザイナーの歩、港の小舟タクシーの艇長を務める水央、周辺の島々で不動産を販売する香奈枝、小惑星帯への長期航海をするクルーたちの子供を預かる保育師の麻子、身分を偽って軌道エレベーターに乗務する麦穂、機械の腕で宇宙船の船首像を彫る里径、大企業の末端で宇宙農場建設を夢見る美旗、そしていち早くカーボンナノチューブに目を付けて軌道エレベーターの建設に着手した、全員の先達的存在のアリッサ。 

 

これは宇宙時代のお仕事小説ですね。時代と舞台が変わっても、夢とスキルとプライドで窮地を乗り切りながら熱く働く女性たちの働きぶりは、今も未来も変わりません。彼女たちの活躍は爽快ですが、その背後に数多くの夢破れた女性たちがいることも、きっと同じなのでしょう。 

 

2019/10