りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ロケットガールの誕生(ナタリア・ホルト)

f:id:wakiabc:20190825145550j:plain


一昨年だったか、NASAのラングレー研究所でコンピュータ(計算手)として働いていた女性たちが、「マーキュリー計画」に多大な貢献をなしえた映画「ドリーム」を見ましたが、こちらはそのカリフォルニア版。UCLAの学生同好会からスタートし、やがてNASAの一部となるJPL(ジェット推進研究所)で活躍した女性たちに焦点を当てたドキュメンタリー。対象となる機関も、宇宙探査の黎明期から現在に至るまでの長期に渡っています。
 

 

同級生たちに誘われて軌道計算を担当したバービー・キャンライト。初期メンバーのひとりで長くコンピュータ部門を率いたメイシー・ロバーツ。彼女の次に部門を率いたバーバラ・ルイス。デジタル・コンピューターのコマンドに引き継がれるプログラミング概念を紙と鉛筆で編み出したスーザン・グリーン。はじめての黒人数学者となったジャネス・ローン。仕事をしながら学位を取得した中国系のヘレン・リー。このあたりまでが第一世代で、エクスプローラー、マーキュリー、アポロ計画を担いました。 

 

当時JPL内で開かれた美人コンテストは、現代の感覚からみた女性蔑視ではありません。コンテストが開かれるほど女性を多く採用している研究部門など、ほかにはなかったのですから。「見た目は少女であっても、淑女のように振る舞い、男性のように考え、犬のように働きなさい」というメイシーの言葉は、当時では最先端の女性のワーキング・スタイルだったはずです。 

 

やがて「男性はエンジニアで女性はコンピュータ」という時代も変わっていきます。スーザン・フィンレイやシルヴィア・ランディという新しい世代の女性たちが担ったのは、スペース・シャトルや、火星を目指すバイキング計画、木犀以遠の惑星を目指すボイジャー計画、太陽系外惑星を目指すニューホライズンズ計画など。その多くは現在でも継続中です。 

 

黎明期から現代に至る宇宙開発計画の発展を縦軸に、女性が歓迎される職場を構築し続ける努力を横軸に据えた本書は、最初から最後まで女性研究者たちの視点から書かれています。著者もまた、長く微生物研究に携わった経験があるサイエンスライターなのです。 

 

2019/9