りぼんの読書ノート

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七人のイヴ 2(ニール・スティーヴンスン)

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いきなり分裂した月の破片が、2年後に地球に降り注いで人類を滅亡させるとの予測に基づいて計画された「宇宙の箱舟計画」は、混乱を引き起こしながらも進行しています。既存の国際宇宙ステーション「ISS」の周囲には、各国から選ばれた1500人の集団や生存に必要な物資、そして遥かな未来に遺すべき遺伝子プールが集積されていきます。

そして2年後、予測通りに「ハードレイン」は起こり、地球からの連絡は次々に断絶。もはやこの1500人が全人類なのでしょうか。しかし「各国元首はISSに送らない」とのルールを破って乗り込んできた前アメリカ大統領のジュリアが、こんな小集団の中でも権力闘争を起こします。生存に必要な氷塊彗星を採取に向かったリーダーのマルクスが事故死した際に、ジュリアは多数派を率いて月よりも高い軌道へと向かいます。そこはハードレインの影響が及ばない反面、別のリスクに曝されることになるのですが・・。

さらに3年後。時間をかけて高軌道の小惑星と合体したISSに対して再合流を求めてきた者たちは、絶滅寸前になっていました。一方のISSでも遺伝子プールを隕石で失うなどのトラブルが起こっていて、人類の生き残りは8人の女性だけになっていたのです。その中で受精卵を生める年齢の女性は7人しかおらず、これがタイトルの「7人のイブ」だったのですね。

「全人類」の内訳は、はじめからISS乗員であった宇宙飛行士のアイヴィとロボット工学者のダイナ。遺伝学者のモイラ。ロシア人宇宙飛行士のテクラ。イスラム原理主義者からの女性解放を説いてきたカミラ。前アメリカ大統領のジュリア。彼女についていって最後に裏切ったアイーダ。そして心理学者である老女ルイーザ。彼女たちは自分の受精卵を、どのように扱っていくのでしょう。

まるで「旧訳聖書」の「創世記」を思わせる展開ですが、これを「ハードSF」でやってしまうのが凄いですね。ただし本書で用いられる科学技術は、現在よりも少し先の時点にあるようです。『最終第3巻』ではどのような展開が待っているのでしょう。

2018/12