りぼんの読書ノート

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七人のイヴ 1(ニール・スティーヴンスン)

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新☆ハヤカワSFシリーズに、ビル・ゲイツが絶賛し、オバマ前大統領も楽しんだという社会派SFの巨匠の新作が登場。原書で880ページの大作が、3分冊で刊行されています。

冒頭でいきなり、月が7つに分裂してしまいます。小型のブラックボールに貫かれたのではないかなどの原因究明作業は、シリアスな未来予測の前に立ち消えになってしまいます。指数関数的に衝突を繰り返す月のかけらが、2年後には無数の隕石となって地球に降り注ぐ「ホワイトスカイ」をもたらし、その結果、地球上のすべてが不毛の地となるというのです。人類という種を残すために、各国政府は協力して既存の国際宇宙ステーション「ISS」を核とする「宇宙の箱舟」の建造を進めるのですが、2年という猶予期間はあまりにも短いものでした。

物語は、ISSの乗員でロボット工学者のダイナと、地球にいてアメリカ大統領の相談役を務める天文学者デュボアの視点を交互に切り替えながら進んでいきます。前者は「箱舟」の建造と維持に伴う難問に挑戦し、後者は人類に未来への希望を持たせるために全力を尽くすのですが、この計画はパニックを防ぐための茶番劇でしかないのでしょうか。第1巻はデュボアが恋人の受精卵とともにISSに到達したところで終わります。

終末をテーマとするSFは数多く書かれていますが、本書のテーマは奇跡的な救済や絶望やパニックではなく、あくまでハードSFとして、既存の技術によって可能なことを描いていくようです。タイトルの「7人のイブ」とは、7つに分裂した月のかけらのことではなく、新たな人類の始祖となる「7人の女性たち」であるとのこと。次巻以降を楽しみに待ちましょう。

2018/12