りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2022 My Best Books

2022年に読んだ本は266作品。後半追い上げたのですが、前半に読書量が落ちていたこともあって、前年よりも21冊も減ってしまいました。今年の特徴は、海外の軽妙で良質な作品が多かったことでしょうか。昨年後半から手に取ることが多くなった韓国フェミニズム小説や、躍進著しい中国SF作品群も強い印象を残してくれました。ともあれ、今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみましょう。

 

・長編小説部門(海外):『レニーとマーゴで100歳(マリアンヌ・クローニン)』

終末医療を受けている17歳の少女と83歳のマーゴが、自分たちが生きた証として、合わせて100年の人生を100枚の絵にして残す計画を立てました。年齢も生きた時代も異なる2人の人生がシンクロしていきます。2人の死で終わるシリアスなテーマであるのに、ファニーで愛らしく仕上がっている奇跡の作品です。

 

他の候補は、チェコの女子大生の分裂した意識が日本の大正期の作家を研究する『シブヤで目覚めて(アンナ・ツィマ)』、架空のポーランドの村を世界の中心として描いた『プラヴィエクとそのほかの時代(オルガ・トカルチュク)』、ブリグジットを背景に書かれた4部作を締めくくる『夏(アリ・スミス)』、日本の敗戦で過去を封印せざるを得なかった台湾人の喪失感を描いた『眠りの航路(呉明益 ウー・ミンイー)』、書肆侃侃房による「韓国女性文学シリーズ」の第1弾『アンニョン、エレナ(キム・インスク)』など。

 

・長編小説部門(日本):『やさしい猫(中島京子)』

シングルマザーの保育士ミユキさんと、スリランカからやってきた心優しい男性との複雑な関係はどうなってしまうのでしょう。ひとり娘の視点から語られる微笑ましい物語は、やがて移民・難民問題という日本の恥部を暴き出していきます。名古屋出入国在留管理局での移民女性死亡事件の前に書かれた本書は、まるで予見の書です。

 

他の候補は、フランス革命前夜のベルギーで女性には許されていなかった科学研究者を主人公に据えた『喜べ、幸いなる魂よ(佐藤亜紀)』、久々の「百物語シリーズ」の新作『遠巷説百物語京極夏彦)』、「逃亡くそたわけ」の17年後を描いた『まっとうな人生(絲山秋子)』、本年上期の直木賞受賞作『塞王の楯(今村翔吾)』、無限の宇宙を疾走するような人生を描いた『自転しながら公転する(山本文緒)』など。

 

・SF/ファンタジー部門:『三体(劉慈欣 リウ・ツーシン)』

躍進著しい中国SFは「本書以前」と「本書以後」に分かれると言われるほどに、画期的な作品です。予測不能な三重太陽の動きに翻弄される惑星の文明と、文化大革命で人類の悪行に絶望した天文学者のコンタクトは、地球に何をもたらすのでしょう。まだ3部作の第1部であり、来年読む予定の続編が楽しみです。

 

他の候補は、並行宇宙をで展開される奇想天外なロミジュリ物語『こうしてあなたたちは時間戦争に負ける(アマル・エル=モフタール/マックス・グラッドストーン)』、誰の記憶にも残らなくなってしまった女性の鮮やかな逆転劇『アディ・ラルーの誰も知らない人生(V・E・シュワブ)』、中国SF傑作選『走る赤(武甜静 ウー・テンジン)編』など。

 

今年も素晴らしい本とたくさん出合えましたが、ウクライナ侵攻の出口は見えていないし、コロナ禍も収まってはいません。来年こそは良い1年になって欲しいものです。

 

2022/12/30