りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2022/12 Best 3

1.三体(劉慈欣 リウ・ツーシン)

近年躍進著しい中国SFは「三体以前」と「三体以後」に分かれると言われるほどに、画期的な作品です。予測不能な三重太陽の動きに翻弄される惑星に文明が生まれたとしたら、どのようなものになるのでしょう。そして文化大革命で人類の悪行に絶望した天文学者が、三体人とファースト・コンタクトの相手だったら、何が起こるのでしょう。奇抜な発想にリアリティを与えるデテイルと、エンタテインメント性と、政治的な問題意識を高次元で結合した本書は、中国でしか生まれ得なかった作品なのかもしれません。

 

2.アニマ(ワジディ・ムアワッド)

数多くの生物たちが語り手となって見守るのは、妻を惨殺した犯人の行方をたどる主人公の追跡劇。レバノン生まれの孤児であった主人公も、カナダ先住民の犯人も、内戦や政治によって自らの魂の言語を奪われてしまった人物です。やがて一匹のオオカミ犬をパートナーとした主人公は、自身の過去の悪夢を追い求めていきます。象徴に満ちたトーテム・ポールのような構造を持つ作品は、人間が自然の一部にすぎないことを感じさせてくれます。

 

3.ははのれんあい(窪美澄

結婚、離婚、出産、独立、転居、不和、病気、同居、別居、そして死別。家族の形に変化をもたらす要因はたくさんありますが、恋愛という感情が大きな原動力のひとつであることに気付かされます。高校生にもなった男の子が恋心を知らないのは、浮気して家を出た父親を許せないでいるからなのでしょうか。否応なしにもたらされる変化に翻弄されながらも、懸命に家族を守ろうとする母と息子の視点を通して、家族の在り方を見つめ直した物語です。

 

【次点】

・アイダホ(エミリー・ラスコヴィッチ)

・星落ちて、なお(澤田瞳子

 

【その他今月読んだ本】

金木犀とメテオラ(安壇美緒)

・アカシアは花咲く(デボラ・フォーゲル)

・小説火の鳥 大地篇上(桜庭一樹

・小説火の鳥 大地篇下(桜庭一樹

・スターシップ1反乱(マイク・レズニック

・スターシップ2海賊(マイク・レズニック

・フォンターネ 山小屋の生活(パオロ・コニェッティ)

・あきない世傳 金と銀12 出帆篇(高田郁)

・古道具おもかげ屋(田牧大和)

・興亡の世界史13.近代ヨーロッパの覇権(青柳正規編/福井憲彦著)

・ミス・サンシャイン(吉田修一

・ひこばえに咲く(玉岡かおる

・帝都最後の恋 占いのための手引き書(ミロラド・パヴィッチ)

・興亡の世界史14.ロシア・ロマノフ王朝の大地(青柳正規編/土肥恒之著)

・息子を奪ったあなたへ(クリス・クリーヴ)

・韓国文学の中心にあるもの(斎藤真理子)

・睦月童(西條奈加

・すごすぎる将棋の世界(高橋茂雄

・レス(アンドリュー・ショーン・グリア)

・ぼくらが女性を愛する理由(ミルチャ・カルタレスク)

 

2022/12/29