1.三体3 死神永生 上下(劉慈欣 リウ・ツーシン)
「三体シリーズ3部作」の最終巻は、宇宙の熱的死と再生への希望までを描く壮大な物語でした。小説的には読者を暗中模索状態に誘い込む第1部が優れているのですが、著者が本当に書きたかったのは本書であるように思えます。第2部で示された「黒暗森林」よりもさらに高次元の「宇宙の暗い秘密」とは、いったい何だったのでしょう。本書は、イーガンの『ディアスポラ』レベルの壮大なスケールを有する物語であるとだけ言っておきましょう。
2.三体2 暗黒森林 上下(劉慈欣 リウ・ツーシン)
三体文明による地球侵略まで人類に残された時間は420年。最後の希望として「面壁計画」を準備したものの、4人の「面壁者」のうち3人までもが三体協会の「破壁者」によって無力化されたしまいます。最後の一人となった羅輯(ルオ・ジー)が宇宙に投げかけた「呪文」は、効力を発揮するのでしょうか。宇宙と文明に関する2つの公理と、2つの重要な概念から導き出された「暗黒森林理論」とは、どのようなものなのでしょう。全3部作の第2部でありながら、大きなクライマックスとなっている作品です。
3.あちらにいる鬼(井上荒野)
父親の井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫関係を、寂聴と妻・郁子の視点から描き出した衝撃作です。なんといっても著者は井上光晴の長女なのですから。当事者であった寂聴によって絶賛された本書は、2人の作家の不倫関係をどのように描き出したのでしょう。そして寂聴と郁子の不思議な交流関係は、何によってもたらされたものなのでしょう。豊川悦司、寺島しのぶ、広末涼子の主演で映画化された作品です。
【次点】
・魂手形 三島屋変調百物語七之続(宮部みゆき)
・すべての月、すべての年(ルシア・ベルリン)
・黛家の兄弟(砂原浩太朗)
【その他今月読んだ本】
・保健室のアン・ウニョン先生(チョン・セラン)
・朱より赤く(窪美澄)
・年月日(閻連科)
・約束の果て(高丘哲次)
・興亡の世界史15.東インド会社とアジアの海(青柳正規編/羽田正著)
・東欧の想像力(奥彩子/編)
・週末沖縄でちょっとゆるり(下川裕治)
・サハマンション(チョ・ナムジュ)
・未踏の蒼穹(ジェイムズ・ホーガン)
・刀と算盤 馬律流青春雙六(谷津矢車)
・三人孫市(谷津矢車)
・名前探しの放課後(辻村深月)
・最後の大君(スコット・フィッツジェラルド)
・興亡の世界史16.大英帝国という経験(青柳正規編/井野瀬久美惠著)
2023/1/31