りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2023/1 Best 3

1.三体3 死神永生 上下(劉慈欣 リウ・ツーシン)

「三体シリーズ3部作」の最終巻は、宇宙の熱的死と再生への希望までを描く壮大な物語でした。小説的には読者を暗中模索状態に誘い込む第1部が優れているのですが、著者が本当に書きたかったのは本書であるように思えます。第2部で示された「黒暗森林」よりもさらに高次元の「宇宙の暗い秘密」とは、いったい何だったのでしょう。本書は、イーガンの『ディアスポラ』レベルの壮大なスケールを有する物語であるとだけ言っておきましょう。

 

2.三体2 暗黒森林 上下(劉慈欣 リウ・ツーシン)

三体文明による地球侵略まで人類に残された時間は420年。最後の希望として「面壁計画」を準備したものの、4人の「面壁者」のうち3人までもが三体協会の「破壁者」によって無力化されたしまいます。最後の一人となった羅輯(ルオ・ジー)が宇宙に投げかけた「呪文」は、効力を発揮するのでしょうか。宇宙と文明に関する2つの公理と、2つの重要な概念から導き出された「暗黒森林理論」とは、どのようなものなのでしょう。全3部作の第2部でありながら、大きなクライマックスとなっている作品です。

 

3.あちらにいる鬼(井上荒野

父親の井上光晴瀬戸内寂聴の不倫関係を、寂聴と妻・郁子の視点から描き出した衝撃作です。なんといっても著者は井上光晴の長女なのですから。当事者であった寂聴によって絶賛された本書は、2人の作家の不倫関係をどのように描き出したのでしょう。そして寂聴と郁子の不思議な交流関係は、何によってもたらされたものなのでしょう。豊川悦司寺島しのぶ広末涼子の主演で映画化された作品です。

 

【次点】

・魂手形 三島屋変調百物語七之続(宮部みゆき

・すべての月、すべての年(ルシア・ベルリン)

・黛家の兄弟(砂原浩太朗)

 

【その他今月読んだ本】

・四畳半タイムマシンブルース(森見登美彦(原案:上田誠))

・保健室のアン・ウニョン先生(チョン・セラン)

・朱より赤く(窪美澄

・年月日(閻連科)

・約束の果て(高丘哲次)

・興亡の世界史15.東インド会社とアジアの海(青柳正規編/羽田正著)

・東欧の想像力(奥彩子/編)

・週末沖縄でちょっとゆるり(下川裕治

レジェンドアニメ!(辻村深月

・サハマンション(チョ・ナムジュ)

・未踏の蒼穹(ジェイムズ・ホーガン)

・刀と算盤 馬律流青春雙六(谷津矢車)

・三人孫市(谷津矢車)

・名前探しの放課後(辻村深月

・最後の大君(スコット・フィッツジェラルド

・興亡の世界史16.大英帝国という経験(青柳正規編/井野瀬久美惠著)

・最初の接触 伊藤典夫翻訳SF傑作選(高橋良平/編)

 

2023/1/31