りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2020 My Best Books

2020年に読んだ本は268作品。コロナ禍で家に籠っていた時間も長かったのですが、2度の引っ越しがあった前年よりも減ってしまいました。むしろ実生活が多忙なほうが読書にも気合が入るのかもしれません。今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。

 

・長編小説部門(海外):『あの本は読まれているか(ラーラ・プレスコット)』

ロシア革命に翻弄された男女の愛の物語である『ドクトル・ジバゴ』を、冷戦期のソ連に流布させようというCIAの特殊作戦があったとのこと。その事実に触発されて書かれた本書では、ソ連側ではラーラのモデルといわれるオリガが著者パステルナークを支え続けた強さが、西側では男性職員よりも低い扱いを受けながらも黙々と作戦を支え続けた女性たちの強さが描かれています。

 

他の候補は、アメリカの樹木保護活動から人類の未来に思いを馳せた『オーバーストーリー(リチャード・パワーズ)』、著者の自伝的要素を絡めて家族の問題と民族の問題を交差させた『ヒア・アイ・アム(ジョナサン・サフラン・フォア)』、中国政府の売血政策によってエイズが蔓延してしまった小村の悲劇を描いた『丁庄の夢(閻連科)』などでした。

 

・長編小説部門(日本):『銀河鉄道の父(門井慶喜)』

国民的詩人とも評される宮沢賢治ですが、父親から見れば浮世離れした詩人にすぎなかったのでしょう。しかし息子に対して「厳しさと過保護の間で揺れ動いた父親」がいなければ、賢治が詩人として大成することなど叶わなかったようです。賢治の父親のみならず、宮沢賢治についてもイメージを覆してくれた作品でした。

 

他の候補は、歌舞伎界で孤高の地位を築き上げた男の鬼気迫る執念を描いた『国宝(吉田修一)』、第一線を引いた合田雄一郎が12年前の未解決事件に挑んだ『我らが少女A(髙村薫)』、。破綻したフランス革命後に強権政治を敷いた男の栄光と転落を丁寧に描いた『ナポレオン三部作(佐藤賢一)』など。

 

・ノンフィクション部門:『コロナの時代の僕ら(パオロ・ジョルダーノ)』

2020年は「新型コロナ禍の年」として長く記憶されるでしょう。緊急出版された本書は、「すべてが終わった時、本当に僕らは以前とまったく同じ世界を再現したいのだろうか」と切実に訴えます。私たちは、この混乱の最中に起きたことを忘れてはいけないのです。

 

他の候補は、ソヴィエト時代を生きた人々について書かれた5部作「ユートピアの声」の完結編である『セカンドハンドの時代(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)』、「ドン・キホーテの頭を狂わせた中世騎士道物語」として有名な中世騎士道物語の『アマディス・デ・ガウラ(ガルシ・ロドリゲス・デ・モンタルボ)』など。

 

今年も素晴らしい本とたくさん出合えました。2021年こそは良い1年にしたいものです。1年以上たっても「はてなブログ」を全然使いこなせていませんが、来年もよろしくお願いいたします。

 

2020/12/29