りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2021 My Best Books

2021年に読んだ本は287作品。まあまあ読んだ方ですが、諸事情あって11月以降の読書量は落ちているので、来年は減ってしまうかもしれません。超大作を一夜で読みきるようなことも減ってきているように思います。重要なのは量より質であることは論を待ちませんが、量を読まないと良質の作品に出逢う数も減ってしまうのです。ともあれ、今年も最後に1年を振り返っての「ベスト本」を選んでみました。

 

・長編小説部門(海外):『ライフ・アフター・ライフ(ケイト・アトキンソン)』

何度も生き返ることが可能だとしたら、人はより良い人生をおくることができるのでしょうか。あるいは世界を救うような正義を実現できるようになるのでしょうか。「もしもヒトラーの権力掌握を阻止できていたら。席はどうなっていたか?」という仮想のもとに書かれた本書は、複雑で重層的でフラクタルな作品に仕上がっています。

 

他の候補は、1974年に書かれた格調高いアウグストゥスジョン・ウィリアムズ)』アメリカ建国の父と呼ばれる第3代大統領トマス・ジェファソンが遺した黒人女性との混血娘の生涯を描いた『大統領の秘密の娘(バーバラ・チェイス=リボウ)』、1920年代のパリで女性会館を建てた救世軍女性を現代の女性が再発見する『彼女たちの部屋(レティシア・コロンバニ)』、ヘンリー8世の時代を秘書官として裏から支えたトマス・クロムウェルの視点から描いた『ウルフ・ホール(ヒラリー・マンテル)』などでした。

 

・長編小説部門(日本):『日本文学全集4 源氏物語池澤夏樹編/角田光代訳)』

翻訳も注釈も数多い古典ですが、角田さんの新訳は秀逸でした。人称代名詞を省くことなく、作者の声を文体を変えて綴ったことで一気読みできるようになったのです。物語が持つダイナミックさを、あらためて理解できたように思います。

 

他の候補は、今更ですが国民的作家・宮尾登美子さんの自伝的な処女作である『櫂』、これも今更ですが今年新装再販されたゴーストハントシリーズ7作(小野不由美)』、2組の夫婦の転落劇を描いた実存小説『卍どもえ(辻原登)』など。なおこれまで『カラマーゾフの妹』しか読んだことがなかった高野史緒さんの作品を、デビュー作から最新作まで楽しく読ませていただきました。

 

・ノンフィクション部門:『FACTFULNESS(ハンス・ロスリング)』

まず、著者が「チンパンジークイズ」と呼ぶ12の質問に回答してみることをお勧めします。私たちが世界を見る視点は、いかに多くの思い込みで歪んでしまっているのかを思い知らされるのです。「状況が悪い」ことと「良くなっている」ことは両立するのであり、「最もタチが悪いのは希望を失うこと」という著者のメッセージに同感する人も多いはずです。

 

他の候補は、不要な仕事が増殖し続ける原理を解き明かした『ブルシット・ジョブ(デヴィッド・グレーバー)』、歴史に埋もれた人々の声を拾い集めた驚愕的な文学作品である『戦争は女の顔をしていない(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ)』、現在までのAIの到達点を見極めようとしたレンブラントの身震い(マーカス・デュ・ソートイ)』など。

 

今年も素晴らしい本とたくさん出合えましたが、まだ世情に明るさは戻っていませんね。来年こそは良い1年になって欲しいものです。

2021/12/28