りぼんの読書ノート

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七人のイヴ 3(ニール・スティーヴンスン)

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突然破壊された月の破片が5000年に渡って地上に降り注ぎ、直前に宇宙に脱出した7人の女性のみが生き残るまでが、第1巻第2巻の物語。最終第3巻では、一気に5000年後の世界が描かれます。

「7人のイブ」の子孫たちは、以前の月の軌道上に無数のハビタット宇宙エレベーターを建設して、7つの人種による新しい文明世界を築きあげていました。しかし彼らは決して一枚岩ではなく、「ブルー」と「レッド」という2つの陣営に分かれて争ってもいたのです。「ブルー」に属するのは、ISS乗員であった宇宙飛行士アイヴィ、ロボット工学者ダイナ、遺伝学者モイラ、。ロシア人宇宙飛行士テクラの子孫たち。「レッド」に属するのは、ISSを分裂に追い込んだ元アメリカ大統領ジュリア、最後にジュリアを裏切ったアイーダ、女性解放主義者カミラの子孫たち。

イブたちがそれぞれに人類に求める遺伝的特徴を組み込んだ結果、「ブルー」たちは互いに補完し合う性質を有していたのに対し、はじめから4人組への対抗意識を有していたアイーダはさまざまなタイプの子孫たちを残し、カミラとジュリアの子孫たちを率いることになったようです。しかし遺伝学者モイラの子孫だけは「エピジェネティック・シフト」という一種の遺伝子変換能力を有していたのです。本書の主人公である「モイラン」の「キャス2」は、後に悲劇的事件に遭遇して「キャス3(キャスリー)」へと生まれ変わることになります。

ここまで書いたのは前提にすぎず、本編では、地球上でハードレインを乗り切った人類との遭遇が描かれます。数千年を地下で暮らした「ディガー」と、深海に潜み続けた「ビンガー」は、イブの子孫たちとのコンタクトに際して、どのように反応したのでしょう。そして「ブルー」と「レッド」の両陣営は、地球の覇権を巡って争うことになるのでしょうか。

第3巻に対しては「蛇足」という読者と、前2巻を長い序章とする「本編」と解釈する読者に分かれるようです。私も「短いエピローグ」で十分だったととの感想を抱いたほうなのですが、「ビンガー」が上田早夕里さんの「オーシャン・クロニクルシリーズ」を連想させてしまったからかもしれません。

2019/2