りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

本屋さんのダイアナ(柚木麻子)

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映画「アナと雪の女王」やドラマ「花子とアン」など、「ダブルヒロイン・ストーリー」が人気を博していますが、本書の2人も強烈です。

金色に染められた髪、大穴という名前、ティアラと名乗るキャバ嬢の母親、行方不明の父親。孤独な小学三年生のダイアナの楽しみは本を読むことだけ。一方で、編集者の父と料理研究家の母を持ち、優等生でお行儀のいい彩子の趣味も読書。一瞬で親友になった正反対のタイプの2人は、かけがえのない友情を育んでいきます。

しかし、モンゴメリーの「アン」も、オルコットの「ジョー」も、インガルスの「ローラ」も、少女を主人公とした小説は、主人公が恋愛したり結婚したりすると、急につまらなくなると思ったことはないでしょうか。仲の良かった少女たちの関係が、離れてしまうと変質してしまった経験はないでしょうか。

公立の中学と高校を出て書店員となったダイアナと、私立中学から有名大学へと進学した彩子の関係は、些細な誤解からすれ違ったままになってしまいます。ダイアナがたどった道のりは、自信喪失、失恋、母親への反発、ようやく捜し求めた父親への失望。彩子もまた、ショッキングな体験をしたことから、流されていく日々を送っていました。

もちろん、このまま終わる物語ではありません。何度も自分を見失いそうにならながらも、「私の呪いを解けるのは、私だけ」との確信を手放すことのなかった少女たちが、最後に得たものは何だったのでしょうか。親友との再会だって、両親との和解だって、自分がかけられていると思い込んだ呪いを解いてはじめて可能になるものなのです。

全ての読書好きの人が楽しめる作品ですが、なかでも「少女小説好き」の方には格別ではないでしょうか。村岡花子が「アン」シリーズのあとがきで書いた「アンとダイアナの関係」に言及した文章も、重要なタイミングで引用されています。

2014/10