りぼんの読書ノート

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死層(パトリシア・コーンウェル)

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シリーズ第20作は、スカーペッタのとんでもなく多忙な1日で幕を開けます。カナダの化石発掘現場で失踪した女性科学者の、耳の断片を写したらしい謎の画像メールが送られてきたと思いきや、ボストンでは巨大なウミガメに引っかかった女性の変死体が発見されて現場に乗り込みます。ようやく水死体を回収して解剖している間に、裁判所から証人として召喚されている時間が切迫。

それは失踪した妻の殺害嫌疑がかけられている大富豪の裁判なのですが、死体も発見されていない裁判に呼ばれるなんて弁護士の嫌がらせのようなもの。ついでに出かけ際に、事故死したと思しき黒人男性の検屍方法に指示。実はこれらの事件は全部結びついていたのですが、例によって後半にならないと関係性は明らかになってきません。忙しいついでに、猫も拾った。

その間には、ボストンの被害者がツイッターのフォロワーだったためにマリーノが嫌疑をかけられる話、弁護士のスパイになっている事務員を発見して解雇する話、夫のベントンに執着するFBIの女性捜査官との対決、姪のルーシーの違法捜査の心配などの「サイドストーリー」がぎっしり。もっとも、このシリーズの魅力は事件そのものよりも、スカーペッタを巡る人間関係のほうですから、決して「サイド」ではないのでしょう。

露骨なネタバレは書けませんので、本書で印象に残った点を2点。1つはスカーペッタが「アメリカの陪審員制度はもはや機能していないのではないか」とつぶやく場面。コーンウェルさんでも、そう思いますか。

もう1つは、スカーペッタが自分の年齢を自覚しながらも「ある種の男たちにとってはトロフィー」と、すなわち「まだまだイケル」を思いながらも、自分を従属させてきた母親を憎む男の被害者となってしまいそうになる場面。ここは「笑うところ」なのでしょうか。そうそう、ルーシーがジャネットとよりを戻しているようです。

2014/10