りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

政と源(三浦しをん)

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73歳どうしの幼馴染、国政と源二郎は、これまでの人生も性格も異なり、ソリも合わないのに、腐れ縁なのでしょうか。ずっと付き合い続けて、周囲からはコンビとみなされています。

総白髪の国政はダンディーな元銀行員で、今は定年退職した身。奥さんに娘の嫁ぎ先に出て行かれてからは、一人寂しく暮らしています。耳の上に残った毛髪を染め上げた源二郎は江戸っ子で、今も現役の「つまみ簪職人」。奥さんには先立たれ、子供もいませんが、通いの弟子の徹平とにぎやかに暮らしています。

対称的な2人の「見事なジジイっぷり」を満喫できる作品です。著者は「細く長く続いて(6年間も連載)、自分でも何を書こうとしていたのかよくわからなくなった」と言っていますが、一応は「擬似家族の再生」と「伝統の継承」というのがテーマのように見受けられます。

元ヤンの弟子・徹平が、昔の不良仲間に強請られているのを助け出したり、年上の美容師のマミちゃんとの結婚を手助けしたりする中で、2人のジジイがあらためて互いを認め合い、国政も奥さんとの仲をちょっと戻すようになるという物語。続編や、2人の若い頃の物語も書かれるのかもしれませんね。

ところで、隅田川と荒川に挟まれて、向こう岸に堀切があって、浅草まで水路が通っているという「東京都墨田区Y町」というのはどこなのでしょうか。鐘淵から曳船までのあたりのようですが、どうやらこの場所は著者の創作のようです。そういえばスカイツリーも出てきませんでした。

2014/10