りぼんの読書ノート

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トッカン-特別国税徴収官-(高殿円)

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若い女性のお仕事小説」というのは、ひとつのジャンルとなっているようですが、本書の主人公は、東京国税局京橋地区税務署に所属する新米税務職員の鈴宮深樹。言いたいことを言えず、すぐに「ぐ」と詰まってしまうため「ぐー子」という情けない通称をつけられています。担当は、上司である特別国税徴収官(略してトッカン)補佐として、税金滞納者から問答無用で取立てをおこなわなくてはならない徴収官。

彼女の上司であるトッカンの鏡雅愛が、冷血無比な性格で、鋭い目つきはまるで「柄の悪いハスキー」というのは笑うところですね。貧しい工場に取り立てに行って追い返されたり、カフェの二重帳簿を暴くために潜入捜査をしたり、納税を拒む資産家マダムの外車やシャネルのセーター、果ては高級ペットまで差し押さえしたり、上司に振り回されながら仕事をこなしていた深樹に転機が訪れます。

きっかけは銀座の高級クラブのママの脱税調査だったのですが、自分にとっては淡々と仕事をしているだけのことが、相手にとっては法を振りかざしての冷酷な行為になることを理解していくのです。税金徴収といっても、人間関係の中で成り立つ仕事ですからね。そして、ちょっぴり苦かったその体験は、過去に脱税の摘発で家業を潰された父親との和解とも繋がっていきます。見直せば、上司の鏡だって、冷酷だけの人物ではなかったのです。

ドラマ向きの小説・・と思ったら、すでに2012年に、井上真央さん主演でドラマ化済みのこと。続編も第3巻まで出ているようです。ところで、日本で一番被害者数が多い犯罪とは・・脱税だそうです。全国民が被害者ということですね。

2014/10