りぼんの読書ノート

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裁きの曠野(C・J・ボックス)

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家族と自然を愛する心優しいワイオミング州の猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズ第6作になります。ただし1作未訳があるとのことで日本では5作めの紹介。

第1作の『沈黙の森』以来、次々降りかかる公私にわたる困難事を乗り越えてきたジョーですが、仕事の上で妥協することないジョーの生き方はますます難しくなっているようです。上司から嫌われて自由な捜査もままならない中で、不思議な事件が起こります。

広大な牧場を支配する女領主オパール・スカーレットが突然姿を消して、もともと不仲だった息子たちの間で遺産を巡る争いが勃発するんですね。長男アーレンと次男ハンクの間で起きた町を二分する争いから距離を置こうとするジョーと妻のメアリーベスですが、娘のシェリダンがスカーレット家の娘の親友という事情もあって、無関係ではいられません。

そんな中で過去の事件からジョーを逆恨みして復讐を誓うキーリーという無法者が現れて、ジョーの家族を付け狙います。彼は、第1作で絶滅危惧種ミラーズ・ウィーズルの発見によって中断に追い込まれた開発推進派の手先となって最後には射殺されたアウトフィッターの兄弟だったのです。しかも父親の死によってジョーの里子となり、第2作で事件に巻き込まれて死亡した娘エイプリルの実の父親だというのですが・・。

オパール失踪の謎に深く関係し、キーリーの復讐の成否の鍵を握ることになったのも、スカーレット家3兄弟の中でみそっかす扱いだった3男ワイアットだったのですが、その内容まで書いてしまったらネタバレですね。

さて本書の終盤になって、ジョーは長年誇りを持って務めていた猟区管理官の仕事から解雇されてしまいます。一方でシェールガス生産によってワイオミングの開発が進んでいるということも、ジョーの仕事と無関係ではないでしょう。次巻の展開が待たれます。

2012/9