りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゼロ以下の死(C.J.ボックス)

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大自然と家族を愛して不正を憎む、心優しい猟区管理官のジョー・ピケットを主人公とする「自然保護ミステリ」の第8作です。

ジョーは、前作復讐のトレイルでハンター殺害事件を解決したものの、法を逸脱した行為を犯したため、辺境のバッグズ地区に単身赴任中。ワイオミングの中でも特に辺鄙というから、相当の場所なのでしょう。そこで密猟者を逮捕していたジョーのもとに、妻のメアリーベスから驚くべき知らせがもたらされます。

シリーズ第2作の凍れる森の事件に巻き込まれ、6年前に死亡したはずの養女エイプリルから、長女シェリダンにショートメッセージが届きはじめ、家族しか知らない事実が書かれているというのです。では、彼女は生きていたのでしょうか。そしてこの6年間を、どのように過ごしてきたのでしょうか。ジョーは、血のつながらない養女を救えなかった罪悪感に再び苛まれます。

一方でジョーは、メッセージに登場する地名と日時が、凶悪な殺人事件の発生と一致していることに気づいて愕然とします。その少女は、凶悪犯と一緒に行動していて、危険にさらされているのでしょうか。ジョーは、友人の鷹匠ネイト・ロマノウスキの応援を得て、シェリダンとともに少女を探しに出発するのですが・・。

タイトルの「ゼロ以下」とは、環境保護者が用いる「ゼロ・エミッション」からきています。本書もまた「自然保護と資源開発に揺れるアメリカ中西部」という現代的テーマを内包しているのですが、まずは「家族愛の物語」として、純粋に楽しめる作品になっています。

2016/6