りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

フリーファイア(C.J.ボックス)

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前巻裁きの曠野で猟区管理官の仕事から解雇されてしまったジョー・ピケットは、義母の再婚先の牧場で牧童頭を務めています。愛する家族と一緒に暮らせるものの、長年誇りを持って務めてきた仕事から離れたことには寂しさを感じています。そんな彼に、変わり者で有名な知事が提示したのは、担当地域を持たずに知事の指定する事件の捜査をする独立猟区管理官の仕事。

問題になっているのは、イエローストーン国立公園内で起きた4人の若者の射殺事件。連邦法が適応される国立公園のアイダホ州側には住民がひとりもいないため陪審員を選出できず、犯人がわかっていても法で裁けないというのです。

「死のゾーン」と呼ばれるようになったエリア内に問題があったのではなく、エリア外で企まれた陰謀ではないかと調査を始めたジョーでしたが、パークレンジャーたちからは疎まれ、やがで彼自身にも危険が及び始め・・。

ほぼ地表に剥き出しになったマグマ溜まりは地球上に30か所しかなく、イエローストーン以外は全て海底にあります。この特殊性が間欠泉をはじめとするユニークな景観を生み出したのですが、最近ではここにしか生息していない嫌気性バクテリアの宝庫としても注目されているとのこと。国立公園ですから商活動は制限されているのですが、抜け穴もありそう。それが事件の背景なのでしょうか。

大自然の宝庫である一方で文明滅亡に繋がりかねない大噴火のリスクを抱えるイエローストーンでは、環境保護と観光活動と経済問題がせめぎあっているんですね。

妻と娘を何よりも大切に思いながら、自然保護に対する使命観では決してブレないジョーですが、政治的には相変わらず不器用です。本書では家族を捨てた父と20年ぶりに再会し、かつて彼の家庭を崩壊に追い込んだ事件も明らかにされます。長女シェリダンは凛々しく、次女ルーシーは可愛く成長していきそう。良質のアウトドア・ミステリのシリーズです。もう10年以上前に訪れたイエローストーンを、懐かしく思い出しながら読みました。

2013/10