りぼんの読書ノート

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まんまこと(畠中恵)

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江戸は神田、玄関で揉めごとの裁定をする町名主の跡取りに生まれた麻之助を主人公とするシリーズは、「妖」こそ登場せず、主人公が青年であるだけに「恋バナがメイン」という違いこそありますが、大ヒット作しゃばけシリーズ」の姉妹編のよう。やはり「大江戸お気楽人情ミステリ」です。

幼い頃は評判のよい若者だった麻之助の人格は16歳の時に突然崩壊し、22歳となった今では町でも評判なお気楽者。でも昔から変わらない親友は、隣町の名主の息子でモテ男の清十郎と、奉行所の町廻同心の息子で真面目一途な吉五郎。そんな彼らのもとに次々と事件が舞い込みます。麻之助は「名主見習い」として名裁定を下すことができるのでしょうか。

見知らぬ娘からお腹の子の父親として麻之助が名指しされてしまう事件。中年男の妄想恋愛話に合わせた「娘」が実際に登場する事件。篤い病を得た青年を愛する娘から「偽りの婚約者」になって欲しいと依頼される事件。清十郎の弟の幸太が亡くなった武家のご落胤と間違われる事件、迷子の狆と無口な娘を「拾って」しまう事件。そして、幸太が誘拐されるという大事件が起きてしまいます。

全てがハッピーエンドというわけではないけれど、麻之助の名推理と名裁定ぶりはなかなかのもの。気になるのは、麻之助の人格を変えてしまった大失恋がまだ進行中であるようなのに、「偽りの婚約者」だったはずのお寿ずさんとの関係の行方です。続編も次々と出ているようです。ちょっと気分転換に読むには「ちょうどいい」くらいというところでしょうか。

2013/10