「ヴァンパイア・クロニクルズ」に属する作品ですが、ここにはレスタトもルイもアルマンも登場しません。彼らとは接点のないまま600年もの間イタリアのトスカナで生き続けてきた孤独なヴァンパイアの物語。
ルネサンス期のトスカナ。地方領主の息子で、天使を思わせる16歳の美少年ヴィットーリオを悲劇が襲います。父の城がヴァンパイア集団に襲われ、一族が皆殺しにあってしまうのです。少年がただひとり生き延びられたのは、美貌の女ヴァンパイア・ウルスラが見逃してくれたから。ウルスラと愛を交わしたヴィットーリオでしたが、ヴァンパイアとなる誘惑を撥ね退けたのは強い復讐の念でした。
本書からは、他の作品に見られるストーリー的な面白さや意外性はあまり感じられませんでした。ルネサンス期のフィレンツェ、とりわけフィリッポ・リッピの作品を賛美することが本書の目的だったようです。ヴィットーリオは、リッピの作品から抜け出してくる天使たちを味方につけて復讐を果たすことになるのですから。それでも彼はヴァンパイアとなてしまう運命からは逃れられなかったのですが・・。また、ヴィットーリオを欺いたウルスラの「その後」はどうなってしまったのでしょう。
ところで、「ヴァンパイア・クロニクルズ」と「メイフェア家の魔女」の両シリーズを融合した作品が、2000年以降4作書かれているのですが、日本での翻訳予定はないようです。「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」のように人気俳優を起用して映画化でもされないと、著者の人気は戻らないのかもしれません。
2013/10