りぼんの読書ノート

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闇の聖天使(篠田真由美)

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ヴェネチアに生きるヴァンパイアを主人公とするゴチック・ロマンですが、あまりにも似合いすぎる両者を結びつけた作品は、あまり多くありません。萩尾望都の『ポーの一族』の舞台は郊外でしたし、「ヴァンパイア・クロニクルズ」で有名なアン・ライスの番外編『呪われた天使、ヴィットーリオ』の舞台はフィレンツェでした。

 

本書におけるヴェネツィアは、ヴァンパイアであるアナスタチオを標的とする異変に何度も襲われて、既に没落しています。かつての観光都市は非合法組織に支配される退廃の都に成り下がっているのです。東京直下大地震によって国土の大半を失った日本から流れ着いた少年ヒカルを、アナスタチオが救助したことから物語が動き出します。

 

やがて異能者としての能力に目覚めたヒカルとは何者なのか。なぜヒカルの存在に気づいた日本政府は、彼を帰国させようとするのか。アナスタチオを執拗に狙う勢力とは何なのか。そしてヴァンパイアではないものの不死のようであり、アナスタチオを守護する執事イズライールの正体とは何なのか。「光と闇の熾烈な闘いを描くヴァンパイア・サーガ」と帯にありますが、誰が光で誰が闇なのかは最後になってもわかりません。

 

正邪の感覚を歪ませる構造になっているようですが、電子書籍で続編が書かれたとのこと。紙ベースで出版されるのを待って、読もうと思います。

 

2019/7