りぼんの読書ノート

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悪魔メムノック(アン・ライス)

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なんと本書はヴァンパイア・レスタトを主人公とする『地獄篇』でした。レスタトの前に現れた男は、自分を「悪魔メムノック」と名乗り、「神と戦っている自分を助けて欲しい」と懇願します。神と天使の関係、世界の創生、生物の発生と人間の進化という壮大な物語を語ったメムノックは、自分が堕天使となった理由の説明を試みます。

自ら作り出した人間の運命に無関心な神に対して、人類全ての救済を目論んだことが神の怒りをかって地上に追放されたというのです。そしてメムノックは、「神との戦いに勝利しつつある」と言うのですが・・。

一介のヴァンパイアではどうしようもない壮大な物語であり、神や堕天使に打ち勝つことなど到底考えられないこと。しかし、レスタトはやはりレスタトであり、「彼自身の王」でしかありません。どんな相手だろうと、従うことなどありえないのですが・・。

それでも、初代女王や、肉体泥棒や、堕天使や神とも遭遇したレスタトが、なんとなく人間らしさを増したように思えるのは、気のせいでしょうか。もうこれ以上の冒険はありえないのでしょうか。本書の後もヴァンパイア関連作品は書かれていますが、「さようなら、愛する者よ」と締めくくられた本書は、やはり、強烈な個性を持つレスタトの最後の物語なのでしょう。クライマックス感も半端じゃありませんし。

2015/3