りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

狼の領域(C・J・ボックス)

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心優しく不器用な、まるで高倉健のようなワイオミングの猟区管理官ジョー・ピケットを主人公とするシリーズの第9作です。家族の住むサドルストリングから遠く離れたシエラマドレでの単身赴任生活を終える直前、ジョーは事件に巻き込まれてしまいます。

 

不審な出来事が続くという奥深い山脈でジョーが出会ったのは、不審な双子の兄弟でした。肉体的にも精神的にもタフで圧倒的な存在感を示す兄弟に対し、ジョーは臆してしまいます。それでも職務を遂行しようと狩猟許可証の提示を求めたジョーは、案の定、兄弟に襲われて重傷を負うのですが、キャビンに住む謎の女に助けられます。

 

その兄弟と謎の女性には、悲しい過去がありました。権力の不正を憎む者であれば、兄弟たちに味方するか、放置してもおかしくないほどなのですが、現在の彼らが法を犯す危険な存在であることも、また事実です。一度臆した心を奮い立たせて、愛する妻や娘たちが自分の死に哀しむ姿を思い浮かべつつも、ジョーは双子と再び対決するために、山奥に踏み込んでいくのですが・・。
 
時代と舞台こそ違え、やはり「義理と人情」の高倉健の世界です。いったんそう思ってしまうと、今までの8作でその連想がなかったことが不思議なほど。

 

ところで、高校生になっているジョーの長女シェリダンも、不正を許すことができない不器用な性格を受け継いでしまったようです。ジョーの友人のネイトから鷹匠の技を学んでいるシェリダンは、やがてジョーの相棒的な存在になるのかもしれません。不幸な生い立ちを持つ養女のエイプリルと、末娘のルーシーがどう育っていくのかも気になります。

 

2017/9