りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

この世は二人組ではできあがらない(山崎ナオコーラ)

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恋愛映画やラブソングの世界では、カップルこそが全てであるかのように描かれますが、社会の構成単位は常にそうでなくてはならないのでしょうか。

川を2つ越えた先にある「彼」の狭いアパートで大学卒業後の半同棲生活が営みながら、主人公の女性は小説家を目指します。男性を好きになること、働くこと、金銭問題、戸籍への疑問、懸賞小説への応募と落選、親との関係、「彼」の心変わり・・こういった「普通」の生活の中で感じたことが素朴に綴られていくのですが、このあたりは著者の実体験がもとになっているのでしょう。

しかし素朴な展開の果てに突如トーンが上がり、著者がたどり着いた「結論」が高らかに歌い上げられるのです。「他人に自分を理解できないなんて思った」のは「今まで何かを伝えようと思って話したことはなかった」からなんだと。「J-POPの世界に生きている」のでも「二人ぼっち」なのでもなく、「みんなで生きているのだ」と。^^

そして半同棲生活を終わりにして、会社を辞めて、「凛として」、主人公は本格的に作家を目指し始めます。「私の事を好きではない読者にも、私の言葉を感じてもらいたい」と。

いいなぁ、この感覚。
鷺沢萠さんの文章を思い出しました。

2012/9