りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ナニワ・モンスター(海堂尊)

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新型インフルエンザを水際で食い止めようと検疫体制を強化する成田空港を尻目に、なぜか関西で発見された第1号患者。保守的だが知恵のある浪速市医師会のロートルメンバーたち。ナニワの風雲児と呼ばれる府知事が抜擢した、地方でくすぶっている検疫所技官と型破りの青年助手。なぜか危機をあおる、アイドル系容姿の公衆衛生講師。

「医療小説」のひとつの定番ともいえる「パンデミックもの」に挑戦か・・との期待は、大きく外れてしまいました。本書の主題は「政治」だったのです。

著者がデビュー作から主張している「AIセンターの創設」を、スカラムーシュ彦根新吾に強引に推進させようとするのはまだしも、それを「道州制」とか、それを推し進めた「日本三分の計」とか、今は早くも化けの皮が剥がれて「旬」が過ぎた感もある、関西でブームを起こした政治家の行動とシンクロさせる展開は、かなりイタい。

何より、第1章の登場人物たちがすっかり放置されたまま、後半がすべて政治的な主張となってしまう展開は、もはや「小説」ではないとすら思えるのです。「田口・白鳥シリーズ」の最新作で最終章の『カレイドスコープの箱庭(未読)』が面白くなかったら、次はもう期待しにくいですね。

2014/10