りぼんの読書ノート

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回天の門(藤沢周平)

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藤沢周平さんの渋い時代劇が、最近続けて映画化されました。「たそがれ清兵衛」と「隠し剣・鬼の爪」。どちらも秀作ですe。

ということで、借りてみたのが本書です。維新の志士たちが活躍する「幕末」のちょっと前の時代に「倒幕」の旗印をかかげ、更には幕府を騙して「浪士隊」を創設させた清河八郎を主人公にした長編です。「幕末は清河が開いて坂本が閉じた」と言われるほどの人物なんですね。

清河の描いたストーリーは「幕府に作らせた浪士隊を、勤皇軍としてしまう」という壮大な詐欺だったのですが、上京途中で芹沢・近藤らに斬られて清河の野望は潰えることになります。浪士隊がその後「新撰組」となることは有名な話。

藤沢さんの長編には、短編のような「冴え」がありませんね。主人公の行動を、生い立ちとか、鬱屈した青春時代などの内的動機から描くというのは、ちょっと陳腐かな。司馬遼太郎のような「史観」を持っている作家にはかなわないんだろうな。ということで、「ふ~ん」で終わってしまった本です。

藤沢時代劇の一番のお勧めは『用心棒日月抄』です。赤穂浪士の討ち入り前夜の、騒然とした江戸を舞台にして、藩の事情で出奔して日雇い用心棒暮らしをする男を描いた連作短編集。もちろん、クライマックスは「討ち入りの夜」。これは、楽しく読めますよ。^^

2005/7