りぼんの読書ノート

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おせっかい屋のお鈴さん(堀川アサコ)

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たましくる幻想シリーズなど、この世とあの世のあわいを軽妙に描く作品を生み出し続けている著者による、可愛い幽霊の物語。

物語の舞台は、著者も働いていたことがあるという杜の都・仙台。地元の信用金庫に勤めている平凡な27歳の村田カエデの生活は、お寺で墓石にけつまずいたことから一変してしまいます。それは、江戸時代に恋煩いで亡くなって成仏できないでいるお鈴お嬢様の墓石だったのです。

たちまち現れたお鈴は、超美人ながら超わがままで、いつも舞妓姿をしている永遠の17歳(なぜなら死んでいるから)。得意技は、夢に忍び込んでトイレを占領し、ついには尿意を我慢しきれなくなった被害者に協力を誓わせるという卑劣な手段。カエデはお鈴の奉公人にされてしまいます。お鈴の目的は、彼女を振って駆け落ちした手代の力弥とおナミの子孫に復讐すること。折しも、2人の子孫が新婚カップルとして信用金庫に口座を開きに来るのですが・・。

第1話で恨みは解消したのに成仏することなく、困った人を放っておけないお鈴さんは、我儘だけれど「いい人キャラ」ですね。お寺の近くで貸本屋を営む老人の家庭問題どころか、その息子が勝手に熱をあげている女性がひっかかった結婚詐欺や、カエデが「親友」の生霊にたたられそうになる事件や、カエデが上司命令で取引先の御曹司と見合いさせられるドタバタにまで、全部関わって来るのですから。

ちなみに、カエデにはポッチャリで優しい彼氏のコンちゃんがいるのです。お天気屋のお鈴さんという続編では、2人が結婚するまでが描かれるようです。

2018/12