りぼんの読書ノート

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幻想温泉郷(堀川アサコ)

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「この世とあの世のあわい」を描く「幻想シリーズ」の第5作は、第1作の幻想郵便局が再び舞台になりますそこでは前代未聞の大事件が起きていました。亡くなった人が成仏する前に生前の善行・悪行を「功徳通帳」に記入して、来世での行き先を決めるシステムが通用しないケースが続発していたのです。

第1巻当時は登天郵便局でバイトをしていた探し物が得意なアズサは、無事に東京のOLになっていたのですが、夏休みに帰郷して元バイト先を訪れたところ、騒動に巻き込まれてしまいます。無事に成仏できない人たちが、生前訪れたという「罪を洗い流す温泉」の探索を頼まれてしまったのです。謎の占い師からの意味不明なアドバイスを頼りに、アズサは枯ヱ之温泉なる温泉郷にたどり着くのですが・・。

「ホラー風味のミステリをラブコメで包み込んで、独特の死生観を焼き上げる」という、著者の調理法は健在ですね。「罪を洗い流す温泉」の根底には、ある人物の「許し」があったのですが、罪をなかったことにしても幸福にはなれないのです。それはもはや「呪い」であるとの指摘は、読者を納得させてくれますね。

第1作で登天郵便局と地権を争っていた狗山比女は、長い眠りから覚めた後、暇つぶしに郵便局に顔を出しているようです。絶世の美少女姿で、超高音から超低音を含むパイプオルガンのような声で話し、人間には理解できない発想で無茶ぶりをしまくる姫神は魅力的です。

2018/5