りぼんの読書ノート

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幻想遊園地(堀川アサコ)

著者の人気に火をつけた「幻想シリーズ」最新作の舞台は失われた遊園地。主人公は『幻想郵便局』で怨霊として登場し、『幻想電氣館』で成仏したはずなのに、『幻想短編集』の「幻想ハイヒール」でちゃっかり現生に舞い戻って探偵局の秘書になってしまった真理子さんです。超絶美女でお人よしでグズで惚れっぽく、「男に媚びる女」として「女に嫌われる女」である真理子さんは、著者のお気に入りキャラなんですね。

 

物語は、幻想探偵社の大島探偵が温泉地に出張して留守の間に持ち込まれた依頼を、真理子さんが受けてしまう所から始まります。依頼者の少年は、同級生の不真面目女子がとある遊園地に行った後で急に真面目になってしまったというのです。これはこの探偵社が扱うべき超常現象なのでしょうか。しかしその遊園地はとうの昔に廃園になっており、その跡地には団地が建っていたのです。

 

その団地を訪れた真理子さんは、新興宗教に嵌まってしまった団地住人の主婦を救出する依頼まで受けてしまいました。その一方で彼女は、幻想映画館にいた頃の夫にそっくりな仏蘭西人形売りの男性と恋に落ちてしまいます。実は大島探偵が温泉地で調査していた村長の息子の浮気調査を含めて、それらの事件は、全部結びついていたのですが・・。

 

しあし『幻想郵便局』の裏山に祀られている美少女神の狗山比売まで登場する物語は、人知れず失われた遊園地の無念の「無限ループ」まで解決したわけではなさそうです。またどこかに幻想遊園地は現れるのかもしれません。教訓をひとつ。廃園直前に最後の別れを惜しみに行くくらい好きなら、その前にもっと行ってあげないといけません。

 

2023/3