りぼんの読書ノート

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プレイバック(レイモンド・チャンドラー)

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村上春樹さんによる「フィリップ・マーロウ・シリーズ」新訳の6作めにあたります。生島治郎氏の名訳「タフでなければ生きていけない。優しくなければ生きている資格がない」の決めセリフで有名な作品ですが、村上さんはどう訳したのでしょうか。

物語は、夜行列車でLAに到着する若い女性を尾行して欲しいという、早朝の依頼電話から始まります。駅で不審な男にまとわりつかれた女性はサンディエゴまで行ってホテルに宿泊。それを追っていったマーロウの部屋に現れた女は、駅で会った男が部屋のベランダで死んでいると訴えますが、その死体は消えていました。

マーロウは女の正体も知らされないまま、別の私立探偵から尾行されたり、ヤクザ者に襲われたり、地元警察に取り調べられたり、雇い主の弁護士に反抗したり、その秘書と寝たりするのですが、自分なりの筋を通し続けるのがハードボイルドの王道たる所以ですね。やがて姿を現した真の依頼人は、とうていマーロウには受け入れられない傲慢な提案をするのですが・・。

本書は、LAに戻ってきたマーロウが、パリにいるリンダ・ローリングと愛の電話を交わす場面で終わります。『ロング・グッドバイ』のヒロインであったリンダと結婚したマーロウが探偵業を続ける次作は未完に終わったとのことで、本書がチャンドラーの実質的な遺作にあたるそうです。シリーズの残り1作の『水底の女』も既に村上さんの新訳で出版されているので、一気に読んでしまいましょう。

2019/6