りぼんの読書ノート

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幻想日記店(堀川アサコ)

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幻想郵便局幻想電氣館に続くシリーズ第3作では、前2作に続いて「生と死の狭間の世界」が描かれますが、本書のテーマは「旅立ち」ではありませんでした。

大学1年生の友哉が働くことになったのは、謎の美女・紀猩子(きのしょうこ)が営む日記堂。山奥に佇むこの店では、人に読ませる目的で書いたのではない「本当の日記」を売っているのです。「悩みと希望の記録である日記は、同じ悩みを持つ人の生きる道しるべとなりましょう」と。

友哉の父の医師から屋台カフェへの転身、友哉の教師・丸山の「幻想郵便局」地主の娘を巻き込んだ三角関係、「怪盗花泥棒」の意外な正体、友哉の恋愛の展開などのエピソードが続く中で、猩子の正体と日記堂を営む目的が次第に明らかになって行きます。

日本最古の日記とされる、紀貫之の「土佐日記」にはどんな謎が隠されているのか。「竹取物語」は紀貫之の日記だったのか。ひとつだけ明かしておくと、猩子は幻想郵便局長の登天さんの娘なんですね。その関係から、古い日記を燃やし続ける登天さんの正体も明らかになるのです。まさかのんびりした焚火の習慣に、そんな深い意味があったとは!

コメディタッチながら、独特の死生観が反映されている「幻想シリーズ」はまだ続いており、すでに『幻想探偵社』と『幻想温泉郷』の2作品が発行されています。とりわけ「温泉郷」では「郵便局」のアズサが再登場しているとのことで、楽しみです。

2018/4