りぼんの読書ノート

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ズーシティ(ローレン・ビュークス)

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動物とペアになった登場人物たちというとライラの冒険を思い浮かべてしまいますが、こちらに登場するのはリアルな動物。とはいえ設定は黒魔術的であり、「重犯罪者はそれぞれ一匹の動物と共生関係になりそれによって超能力を得る」という不思議な世界の物語。動物と不仲になったり、動物が死亡したりすると、反動で精神的外傷に襲われるようです。

南アフリカヨハネスブルクの一角にある「ズーシティ」は、動物と共生する重犯罪者が暮らす、吹き溜まりの街。かつて兄を殺害した事件の従犯となってナマケモノと共生し、紛失物の捜索能曲を持つ若い女性ジンジが主人公。どうやら紛失物と本人を結んでいる糸が見えるようなのです。

そんなジンジが、人気ポップグループの双子兄妹の片割れであるソングという少女の失踪事件の捜索を依頼されます。依頼主である大物音楽プロデューサーのハロンからは太い糸が無数に伸びており、いかにも危なそうな人物。やがてソングの行方は知れるものの、重要なのはなぜ彼女は逃げ出さなくてはならなかったのかという事情でした。その背後には、いかにもアフリカらしい犯罪があったのです。

本書において、超能力がそれほど大きな役割を果たすわけではありません。表面上はアパルトヘイトが否定された南アフリカに於いて、動物を連れていることが新たな差別対称になっているようにも思えます。内戦を繰り返す隣国からの難民流入が続く中で、黒魔術と結びついた権力や暴力や金に支配されている歪んだ国家の内情が伝わってくるかのような作品です。

実は南アフリカには仕事で数回行ったことがあるのですが、ヨハネスブルク近郊のホテルと訪問先のオフィスの記憶しかありません。危険ということで、仕事以外ではホテルから一歩も出ないよう、強く勧められていたのです。

2018/4