りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

幻想探偵社(堀川アサコ)

イメージ 1

この世とあの世のあわいを描く「幻想シリーズ」 の第4作は、幽霊専門の探偵社でした。そこは、無事に成仏できなかった幽霊が塵芥となって消滅してしまう前に、この世に残した想いを解決するための調査機関なのです。

イケメンなのに女子の前であがってしまう中井海彦は、中学入学時から気になっていた楠本ユカリの生徒手帳を拾って、彼女に手渡すために後を追ったところ、たどり着いた先は「たそがれ探偵社」。ユカリの従妹は幻想電氣館でバイトしていた楠本スミレだったのですが、これはまた別の物語。

そこに現れた依頼人の大島は、自分が幽霊になった理由もわからないまま消滅寸前の状態。もとは幻想郵便局の貯金窓口係であった探偵署長から、自分の望みを叶えてくれるという約束と引き換えに、海彦とユカリは捜査を手伝う約束をさせられてしまいます。

その過程で出会った万引き本に未練を残す老書店主の幽霊や、幼児を育てる少女の生き霊の謎を解いていく中で、大島が中学3年生の時に学校の庭園で何かが起こったことをつきとめます。しかしその時、大島を殺害した犯人の魔の手がユカリのことを狙っていたのです。

さまざまな謎がひとつの事件の解決に結びついていく展開は見事ですし、事件の捜査を通じて中学生のカップルが成長していくというテーマも好ましいですね。思えば中学生の時に夢をあきらめた人物が、事件解決の大きな手がかりをもたらしたわけであり、成長しないことのおぞましさが事件を象徴するものだったわけです。このシリーズは、第5作まで出ているようです。次巻も読んでみましょう。

2018/4