りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

荊の城(サラ・ウォーターズ)

イメージ 1

前作『半身』で読者を不思議な世界に引きずりこみ、一転しての意外な結末で完全に意表を衝いてくれた、名手・サラの第2弾です。

舞台は『半身』と同じ19世紀のイギリス。ロンドンの下町でスリとして暮らす少女スウに持ちかけれらた計画は、ある令嬢が相続する財産を結婚詐欺で奪い取ろうというもの。スウは、令嬢モウドの侍女として居城に乗り込むのですが、この計画には二重三重の「裏」があったのです。

お互いに騙し合いながらも惹かれ合うスウとモウド。このあたりは「例の不思議な世界」です。もっとはっきり言うと、同性愛的な相当危ない関係です。2人とも相手を恨みながら、不幸のどん底に叩き込まれるのですが、もちろんこれだけでは終わらないのがサラの「仕掛け」。最後まで、意表を衝かれることは請け合えます。

これ、昼ドラでやって欲しいな(笑)。2人のドロドロの関係や、出生の秘密なんかはTV向けでしょう。この作者は相当ディケンズを意識していますよね。『デヴィッド・カパーフィールド』や『オリヴァー・ツィスト』と同じ世界が、意図的に再現されているようです。

2005/6