りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

秘密(東野圭吾)

イメージ 1

バスの転落事故で、妻・直子は死亡し、娘・藻奈美は意識不明。意識を取り戻した娘の身体に宿っていたのは妻の「心」でした。そして実際は夫婦である、父と娘の「秘密」の生活が始まります。

セックス問題こそは未解決のままでしたが、奇妙な「秘密」の関係は、一時は安定したかのように見えます。ところが妻として夫を愛し続けている「直子の心」を、「成長する10代の娘の身体」は裏切り始めてしまうんですね。それは父に裸を見られたくないとの感覚にはじまり、やがて同年代の異性への感情も・・。

夫は妻への嫉妬に身を焼かれ、もちろん2人とも苦しみもがきます。夫の出した結論は「これ以上、直子を苦しめられない」。人間できてますね。「藻奈美として新しい人生を歩むように」との悲痛な決断を告げた日が、「もうひとつの奇跡」と「もうひとつの秘密」の始まりでした。

不覚にもラストで涙を流してしまった。感想としてはこれだけで十分でしょう。男性の作者によって「夫」の一人称で書かれた小説ですから、「夫」や「父」の立場で読むと感情移入しちゃうこと間違いなし!。しかも映画での「娘役」が広末涼子ですし(笑)。

2005/6