りぼんの読書ノート

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ユグノーの呪い(新井政彦)

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主人公は「ヴァーチャル記憶療養士」なる不思議な職業。それは、デジタル化された患者の心に入り込み、トラウマなどの精神障害と対決する治療を行う専門家。治療の済んだ「心」を患者にダウンロードして治療完了。

ウィリアム・ギブソンが『ニュロマンサー』で開いたサイバーSFの世界ですが、日本では「精神世界=ファンタジー」として描かれることが多いようです。本書でも患者の抱えるトラウマには「番人」がいて、そこをクリア(治療)するには説得するか、倒すかしないといけません。やっぱり、ファンタジー・ゲームの世界です。

治療の依頼者はメディチ家の末裔。心を閉ざしてしまった14歳の娘の「心」にあったのは、本人が知るはずもない16世紀のユグノー大虐殺の記憶でした。それは、メディチ家からフランス王家に嫁ぎ、ユグノー虐殺を起こした張本人と言われる「カトリーヌ・ド・メディチス」がかけられた呪いなのでしょうか・・とまぁ、こんなお話です、

この話、設定は悪くないと思うのですが、「番人の謎」が、ほとんど語呂合わせってのが減点対象。せめてフロイトユングあたりを、もっと活用してくれても良かったのに。本書は2004年の「日本ミステリー文学大賞新人賞」受賞作だそうです。「仕掛けの奇抜さ」以外で勝負するときに、作家の力量が問われることになるのでしょう。

2005/6