りぼんの読書ノート

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火の柱 上(ケン・フォレット)

イギリス南部の架空都市キングズブリッジを舞台とする「大聖堂」シリーズの3作目にあたります。第1作『大聖堂』は12世紀、第2作『果てしなき世界』は14世紀の物語ですが、本作え描かれる時代はエリザベス1世が即位した1558年からメイフラワー号がアメリカに渡った1620年まで。物語の舞台もキングズブリッジを飛び出して、ロンドン、スコットランド、フランス、ネーデルランド、スペインへと広がっていきます。

 

大聖堂を要するキングズブリッジは河畔の商業都市であり、貿易を営むウィラード一家はカトリックでありながらもプロテスタントに寛容な家柄でした。しかしカトリックにもプロテスタントにも不寛容な者たちは常にいるのです。ウィラード家の次男ネッドが恋したマージョリーフィッツジェラルド家はウルトラカトリックであり、娘を伯爵家に嫁がせることにしていました。彼らの策略によってウィラード家は資産を没収され、失意のネッドはかつて知遇を得たサー・セシルを頼って、エリザベス・チューダーに仕えることになります。しかしマージョリーの兄であるロロは、ネッドの生涯を通じての敵となっていきまう。

 

次のイングランド王位をエリザベスと争うことになるスコットランド女王メアリー・スチュアートは、後にフランス王となるフランソアと結婚したところでした。フランスでもカトリックプロテスタントの抗争は激しさを増しつつあり、両派の融和を願うカトリーヌ・ド・メディシスの尽力にもかかわらず、ユグノー戦争が始まろうとしていました。カトリック勢力の中心であるギーズ公爵家の私生児であったピエールは、ギーズ家に仕えるためにスパイ役をかってでます。

 

一方ネッドの兄バーニーは、セビーリャで製鉄業を営んでいる大叔母の仕事を手伝っていました。又従兄弟のカルロスやアフリカ人奴隷のエブリマらと工夫を重ねますが、異端審問官と組んだライバルに襲われて事業を失い、3人はセビーリァを脱出。アントワープへと向かいます。

 

上巻はまだ時代背景や登場人物の説明ですね。この後イギリスではエリザベスが即位して周囲のカトリック諸国と対峙。フランスはユグノー戦争に突入していき、カトリックの大国スペインはネーデルランド独立戦争と対イギリス戦争へと向かっていきます。本書では宗教の如何にかかわらず、寛容と不寛容の対立が描かれていくようですが、本書の主人公たちはどのような運命を切り開いていくのでしょう。各巻に、実在した人物と著者の創造による人物を区分した登場人物表がついているのが助かります。

 

2022/8