りぼんの読書ノート

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安政五年の大脱走(五十嵐貴久)

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ラナさんが紹介してくれた本。この話は「恋に狂う井伊直弼」を悪役にもってきた段階で成功してますね。面白かったですよ。

大老井伊直弼が小藩の美姫に妄執を抱き、彼女の心を手に入れるために仕掛けた陰謀。それは、藩士たちを人質に取って、彼らの命と姫の気持ちを天秤にかけること。藩士たちは、姫とともに断崖絶壁の死地から脱出を図ります。

実は直弼には将来の夢を失いかけた部屋住みの時代があり、その時に垣間見て以来、20年間忘れられなかった女性がいたんですね。直弼が狙う美姫とは、その女性の娘だったのです。不遇時代の「高嶺の花」か・・執念深くなりそうだ(笑)。

この話、直弼クンを「純愛貫くマジメ君」に描けたら、もっと良かったのに。ほら、せっかく直弼の腹心に、悪役キャラの長野主善がいるんだからさ。しかし権力を持ったストーカーは怖いな。現代では、権力者といえどもセクハラで失墜することもあるから、こんな無茶はできませんよね。民主主義を進展させてくれた、先人たちに感謝です。

ところで姫を含めて人質に取られた藩士は52人。トランプの1セットと同じ数字で、蘭学に通じた主人公もいたから、カードにちなんだ仕掛けでもあるのかと思ったけど、全然、関係ありませんでした。ひょっとして、あの映画の脱走者が52人だったのでしょうか。^^

2005/6