りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

半身(サラ・ウォーターズ)

イメージ 1

不思議な本でした。舞台は19世紀末のロンドン。獄中に囚われた霊媒の美少女シライナ。慰問に訪れる貴族令嬢マーガレット。この2人の同性愛的な交流が魔術的なタッチで描かれます。てっきりオカルトっぽい話かと思いながら読んでいたのですが、意表をついて思い切りリアリスティックな結末。さすがに去年の「このミステリーがすごい」海外部門第一位。やってくれるね。^^

「半身」とは、本来は1つであった存在が現世で2つに引き裂かれた「もう半分の自分」のこと。半身同士が出会ってしまったら、運命的に引き寄せられていくとされています。シライナに惹かれるあまり、彼女を自分の半身と信じていくようになるマーガレットの悲劇が、1人称で日記の形で綴られていきます。

対象が、恋でも、宗教でも、思想でも、たぶん一緒。外から見ていると「壊れていく」としかいいようのない激情にかられて何かを信じ込むこと、怖いよね。同性愛がひとつのテーマになってるので、男性には抵抗感あるかも。

カルロ・クリヴェッリ作の「マグダラのマリア」という、表紙に描かれたフランドル絵画の女性像が、ゾクッとするほどいいですよ。シライナにそっくりという設定なのですが、読む途中で何度も見返しましてしまいました。

2004/7