りぼんの読書ノート

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ジャッカルの日(フレデリック・フォーサイス)

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数か月前に著者の自伝である『アウトサイダー』を読んで、本書を再読してみました。相当前に読んだので、本書そのものよりも、ブルース・ウィリスが主演した映画の印象のほうが強かったのですが、あらためて読んでみると原作のほうがスリリングですね。映画ではブルース・ウィルスの変装シーンの印象が強すぎましたので。 

 

アルジェリア独立を容認する方針を打ち出したド・ゴール大統領に反発した極右軍人たちが、大統領暗殺を試みて失敗したのが1961年9月のこと。著者は、この時にロイター通信社のパリ特派員として事件を取材した経験をもとにして、本書を執筆したわけです。当局から目を付けられていた極右軍人たちよりも、プロの暗殺者に依頼するほうが成功確率が高かったであろうという判断は、おそらく正しかったのでしょう。余談ですが『ゴルゴ13』の連載開始は1968年のこと。本書の出版が1971年ですから、さいとうたかお氏の慧眼にも感心してしまいます。 

 

本書では、ジャッカル側の偽造パスポート準備、変装テクニック、武器の調達と持ち込みの手法などがリアリスティックに描かれていきます。その一方で彼を追うルベル警視側が、幸運にも恵まれつつも捜査の輪を狭めていく過程も丁寧に描かれるのです。暗殺者から逃げ隠れすることを拒む大統領の警護が、いかに大変なことか。 

 

もちろん読者はド・ゴール暗殺など起こらなかったことを知っています。結論はわかっているのに、読者をここまで引き込むドキュメンタリー手法を用いた小説が、当時は極めて新鮮であったことは想像に難くありません。今になって再読しても、引き込まれて一気読みしてしまったほどです。 

 

2019/12再読