りぼんの読書ノート

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物語ナイジェリアの歴史(島田周平)

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ナイジェリアを舞台にした『ぼくらが漁師だったころ(チゴズィエ・オビオマ)』を読んで、この国の歴史に興味が湧きました。かつての奴隷輸出国、独立直後のビアフラ戦争、何度も繰り返さえたクーデター、最近ではイスラム過激組織であるボコ・ハラムの跳梁など、マイナス・イメージしかなかった国なのです。 

 

アフリカはサハラ砂漠南縁を境に、北のアラブ主義と南のネグロ主義に分けられるとのこと。スーダンから南スーダンが分離独立した後は、この両者にまたがる唯一の国がナイジェリア。イギリスによって植民地化される前は全く別の部族国家であった両地域が混在することが、この国の強みでもあり弱みでもあるようです。もっとも近年では弱点にしか働いていないようですが。150万人以上のイボ族犠牲者を出したビアフラ戦争も、北部と南西部、南東部の対立構造も、ボコ・ハラム問題も、ニジェールデルタの地域紛争も、その延長線上で起きた出来事ですね。 

 

しかし著者は、この国が地域的・民族的多様性を経済発展に結びつけることが出来さえすれば、真の意味で「アフリカの巨人」となることも可能であると述べています。なんといっても、世界7位にあたる2億人近い人口を抱える巨大国家なのですから。その道は苦難に満ちていますが、分裂に向かう国家再編が内戦を伴いがちであることを考慮して、冷静な判断を下して欲しいものです。 

 

2019/12