りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

鷲たちの盟約(アラン・グレン)

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大統領選に勝利して就任目前だったルーズベルトが暗殺されてから10年後の1943年。大衆迎合主義者であったヒューイ・ロングが大統領となっていたアメリカは、未だに大恐慌から立ち直れず、欧州をほぼ制圧したヒットラーと盟約を結ぼうとしていました。

ポーツマス市警のサム警部補は、栄養失調状態で手首に6桁の数字の入れ墨を持つ身元不明の死体の捜査を開始しますが、FBIによって阻まれます。折りしも、独米通商条約に合意した両国首脳会談がポーツマスで開かれることとなり、サムは警備に駆り出されるのですが・・。

ディックの『高い城の男』やジョー・ウォルトンファージング・シリーズと同様、ファシズムに支配された世界を描いた「歴史改変サスペンス」です。

強制収容所、密告、監視、暴力、党の専制・・。そんな社会の中で、思想犯であったサムの兄は刑務所を脱走し、サムの妻はユダヤ人の密出国を助ける活動をしています。やがて、身元不明の死体の真相に気づいたサムの身にも危険が及んで来ないわけはありません。そしてヒトラー暗殺計画を知らされたサムはどう行動するのでしょうか。

ファージング・シリーズで、歴史を「正常化」へと軌道修正させることになったのは、イギリス女王の決断でした。本書でそのきっかけとなるのは、思いも拠らないことなのですが、それまでが暗くて長いですね。本書の範囲内での軌道修正は端緒でしかないので、歴史の復旧過程がもう少しあっても良かったのでは?

2014/4