りぼんの読書ノート

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ユニコーン(原田マハ)

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15世紀フランドル織物の大傑作である「貴婦人と一角獣のタピスリ」は、どのような経緯でカルチェ・ラタンのクリュニー美術館に所蔵されるに至ったのでしょうか。著者は、地方の古城で朽ち果てようとしていたタピスリが、ジョルジュ・サンドを介して、初代館長のソムラールに購入を依頼されたという物語を紡ぎ出しました。

本書の中核をなしているのは、シングルマザーとなって生活に困窮した時期のジョルジュ・サンドが、老婦人からブーサック城に招かれた際のエピソードです。タピスリーに描かれた貴婦人が夢に現れ、ジョルジュ・サンドに向かって「お願い、ここから出して」と語りかけたというのです。貴婦人の願いは、ジョルジュ・サンドの遺言となってソムラールに届けられることになります。

実際にこのタピスリは、ジョルジュ・サンドが自作の小説で紹介されたことから知られるようになったとのことです。巻末にジョルジュ・サンドがタピスリに触れた短編「マルシュ地方とベリー地方の片隅」と「戦争中のある旅行者の日記」も併録されています。装丁の美しい作品でした。

2019/6