りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

あしたのロボット(瀬名秀明)

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「あたしのロボット」じゃないですよ(笑)。

瀬名秀明といえば、ミトコンドリアの復讐をテーマにした「パラサイト・イブ」でデビューし、科学ホラーを得意とする「日本のマイケル・クライトン」(あたしが勝手に名づけました^^)。マイケル・クライトンが「人間型知性ロボット」をあきらめているのに対し、アトムの原体験を持つ日本人はしつこく「AI」を追求するんですね。

時代を超えた2つのストーリーが交互に進展していきます。ひとつめは、遠い未来。人類がすでに滅んだ(と思われる)世界に生き残った少年ロボット(?)が、ロボット仲間に言い伝えられる「アトム」とか「正義の味方」というキーワードを手がかりに、自分のルーツを探しに旅する話。

もうひとつは、現代から近未来。オムニバス的に、ロボット開発の歴史(といっても、これから先の「歴史」です)をたどり、アトムを誕生させようとする日本人科学者たちの「Project X」。

少年ロボットがやがてたどりつくのは、遠い昔に廃墟となったテーマパークの「手塚治虫ワールド」。実は、そこでアトムは開発されていたのです。既に壊れた試作品のロビタやチヒロ(火の鳥に出てくるロボットだよ)に囲まれて、カプセルの中に眠るのはアトム。

残念ながら、アトムのカプセルは目覚めの日を前にして、崩壊した建物によって壊れてしまっていました。だから、アトムが完成されていたのかどうかは不明・・というところで話が終わります。その後は読者の想像力の世界。

ロボットに必要なのは正義感。正義の判断基準はそれぞれのロボットが経験で学んでいくもの。その個体差こそが、ロボットの個性であり自我である。こういう物語にはロマンを感じるのです。

2004/7