りぼんの読書ノート

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貴婦人と一角獣(トレイシー・シュバリエ)

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パリのクリュニー美術館にある、中世美術の最高傑作といわれる6枚の連作タピスリー「貴婦人と一角獣」の制作をめぐるドラマを小説仕立てにしたもの。もちろん、作者の創作です。この作家は『真珠の耳飾の少女』という作品も表わしており、美術品から連想した小説を書くのが得意のようですね。

パリの絵師ニコラ、ブリュッセルの織物工房の親方や弟子、貴婦人のモデルになった4人の女性たちの想いが一人称で語り継がれ、このタピスリーに秘められた「愛の事件」が綴られていきます。

注文主の貴族の娘クロードに想いを寄せるニコラは、彼女と、彼女の母親をモデルに、タピスリーの下絵を書き上げます。もちろん、身分違いの恋が叶うはずもありません。奔放な娘クロードもニコラに想いを寄せていることを知った母は、ニコラをブリュッセルの工房まで使いに出すことにします。工房の親方の娘、盲目のアリエノールにも心引かれたニコラは、そこでも一騒動起こしてしまうのでした。

処女にしか捕まえられない一角獣は、実は男性のシンボル。ハンサムで天才で、正義感は強いものの、女性には節操無いニコラは、自分のことだと思ってるな(笑)。

このタピスリー、辻邦男の傑作『回廊にて』でも重要な役割を果たしていました。パリに行くことがあったら、ぜひ見たい作品です。表紙や内装に、カラーで収録されているタピスリーを何度も眺めなおしながら、ゆっくりと読みました。^^

表紙になっている、貴婦人が鏡を持った「視覚」の絵。このモデルが「盲目のアリエノール」という作者の設定には、色んな寓意性を感じますね。

2005/5