りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2005/5 半島を出よ(村上龍)

村上龍は嫌いです。彼の「破滅へのパッション」からは、混乱しか生まれないと思うのです。でも『半島を出よ』には、その発想の奇抜さと大胆な展開に脱帽です。
次点の2作品は、芸術作品の由来に想像をはばたかせた美しい小説。
1.半島を出よ (村上龍)
経済が破綻し世界の厄介者になった日本に対して、米中が黙認した計画は、北朝鮮「反乱軍」によって福岡を占領、日本からの独立を宣言させること。手をこまねく日本政府にかわって、戦いを挑むのは、元犯罪者の少年たち。世界の孤児であった北朝鮮の軍エリートたちと、日本社会の少数者だった元犯罪者の少年たちの想いの交錯が、読ませどころです。

2.生は彼方に (ミラン・クンデラ)
著者自身がモデルと言われる「革命派詩人」青年ヤロミールの短い一生が、時代も国も違うランボーシェリーやバイロンらの人生と交錯していきます。これは、作者が「詩作」を葬り去った心情を書いた本ですね。「詩人の情熱」がいかに脆くて危険なものかが訴えられるのです。革命を熱望する詩人たちにとって「本当の生は彼方に」しかなく、現実は、常に理想から遠いために無視されるべきものだったのです。

3.夜来たる (アシモフ/シルヴァーバーグ)
6つの太陽を持ち、「夜」が訪れたことのない惑星に「夜」が訪れた時、いったい何が起こるのか。「星」が出るのです。はじめて見る夜空に煌く星々に恐怖に駆られた人々は、何を思ってどう行動するのか。アシモフの傑作短編を、新進気鋭のSF作家がリライトした作品です。



2005/6/5