1位の『ミドルセックス』は、『私の名は紅(あか)』や『その名にちなんで』とならんで、年間ランキングでも上位に入る傑作です。伊坂幸太郎さんとの出会いも、今月のトピックスですね。1.ミドルセックス (ジェフリー・ユージェニデス)
両性具有の少女が語る、アメリカに移民したギリシャ人一族の歴史は、まるで「現代の遺伝子学がギリシャ神話の運命論と結びつく」一大叙事詩。トルコとの戦争で炎上するスミルナから、禁酒法時代のデトロイトに舞台を移して語られる、祖父母の結びつきに隠された秘密とは・・。そして美しい少女だったカリオペに訪れる「運命の日」。深いテーマでありながら、読後感は爽やかです。
2.本格小説 (水村美苗)
「嵐が丘」を現代日本に甦らせた野心作。作者の狙いは純文学の復権? そもそも、なぜ、あえて「嵐が丘」なのか? 「前置き」で、作者の履歴の中に本書の主人公を忍び込ませ、本書を書くに至った必然性を説明し、三重の「入れ子構造」で語るのは、「私小説」から「本格小説」への橋渡しをスムーズに行うため? そこまでしてなお、むしろそこまでするから、物語はリアリティを失います。もちろん、作者は全部わかってやっています。
「嵐が丘」を現代日本に甦らせた野心作。作者の狙いは純文学の復権? そもそも、なぜ、あえて「嵐が丘」なのか? 「前置き」で、作者の履歴の中に本書の主人公を忍び込ませ、本書を書くに至った必然性を説明し、三重の「入れ子構造」で語るのは、「私小説」から「本格小説」への橋渡しをスムーズに行うため? そこまでしてなお、むしろそこまでするから、物語はリアリティを失います。もちろん、作者は全部わかってやっています。
3.重力ピエロ (伊坂幸太郎)
村上春樹にも似た「上質な軽さ」を感じます。異父兄弟である、泉水と春が追う連続放火班の正体と目的は? 「捜査」の過程で紹介される、泉水と春の家族が素晴らしい。「空中ブランコを飛ぶピエロは一瞬だけ重力を忘れることができる」とのタイトルは、「大変なことこそ、軽々とクリアしなきゃいけない」ってことですね。「本当に深刻なことは陽気に伝えるべき」なのです。
村上春樹にも似た「上質な軽さ」を感じます。異父兄弟である、泉水と春が追う連続放火班の正体と目的は? 「捜査」の過程で紹介される、泉水と春の家族が素晴らしい。「空中ブランコを飛ぶピエロは一瞬だけ重力を忘れることができる」とのタイトルは、「大変なことこそ、軽々とクリアしなきゃいけない」ってことですね。「本当に深刻なことは陽気に伝えるべき」なのです。
その他今月読んだ本
・安政五年の大脱走 (五十嵐貴久)
・ユグノーの呪い (新井政彦)
・ミリオンダラー・ベイビー (F.X.トゥール)
・暗闇の速さはどのくらい (エリザベス・ムーン)
・ドリームバスター1・2 (宮部みゆき)
・バルカン・エクスプレス (スラヴェンカ・ドラクリッチ)
・凍りついた香り (小川洋子)
・文学賞メッタ斬り (豊崎由美、大森望)
・ぼくは行くよ (ジャン・エシュノーズ)
・水滸伝17 (北方謙三)
・ラッシュライフ (伊坂幸太郎)
・安政五年の大脱走 (五十嵐貴久)
・ユグノーの呪い (新井政彦)
・ミリオンダラー・ベイビー (F.X.トゥール)
・暗闇の速さはどのくらい (エリザベス・ムーン)
・ドリームバスター1・2 (宮部みゆき)
・バルカン・エクスプレス (スラヴェンカ・ドラクリッチ)
・凍りついた香り (小川洋子)
・文学賞メッタ斬り (豊崎由美、大森望)
・ぼくは行くよ (ジャン・エシュノーズ)
・水滸伝17 (北方謙三)
・ラッシュライフ (伊坂幸太郎)
2005/7/4